[2011 発表要旨]
林田 晋典 HAYASHIDA, Yukinori
兵庫県神戸市出身。卒論で松田川と蛎瀬川の河口域の魚類相について執筆中。

高知県宿毛市松田川感潮域に出現する魚類蛎瀬川と比較しながら

林田晋典(高知大学理学部理学科海洋生物学研究室)

 松田川は1999年以降, 魚類調査が行われていない. 本研究では20109月末から201011月末にかけて,松田川の感潮域における魚類の出現状況を調査した. また,松田川と黒潮町の蛎瀬川で曳き網による定量調査を行い, 両河川の結果を比較した. その結果, 松田川では高知県レッドリスト掲載種10種を含む71646種を確認し, そのうちマサゴハゼやアシシロハゼなど20種は松田川初記録であった. 定量調査では松田川で71642種の合計725個体, 蛎瀬川で717341221個体を採集した. 松田川大橋付近に設置した定点2では松田川の他の調査地点と比べ, 最も多くの種と個体数が採集された.これは定点2の周辺に隠れ家となるものが多く見られたためであると考えられる. また松田川のミナミヒメハゼの出現率は約1.2%であったが, 蛎瀬川は約35.7%であった. これはミナミヒメハゼが好む砂泥底が蛎瀬川の調査地点のすべての地点でみられたのに対し, 砂泥底は松田川の調査地点の一部にみられたためであると考えられる.


河口 拓紀 KAWAGUCHI, Hiroki
山口県岩国市出身。黒尊川をフィールドとして卒業研究を実施。卒業後は愛媛大学理工学研究科生態学研究室に進学予定。

河川蛇行部に形成される淵に生息する魚類

河口拓紀(高知大学理学部海洋生物学研究室)

 近年の河川環境の保全と復元に関する研究から,蛇行流路の再生が重要視されている.しかし,蛇行によって形成される河川の物理環境と魚類の生息量の具体的関係は十分に解明されていない本研究では,高知県西部を流れる四万十川支流黒尊川において,程度の異なる蛇行により形成された淵を12地点設定し,物理環境とそこに生息する魚類群集を定量的に調査した。線形回帰分析を用いたデータ解析の結果から,最大水深と水深変動係数が蛇行度と共に増加することが判明した。河道が大きく蛇行することで,水深の深い水域と淵頭や淵尻といった比較的水深の浅い水域が顕著にあらわれる淵が形成されると考えられる。また,カワムツ,ウグイ,オイカワ,ドンコ,ヌマチチブ,ボウズハゼの6種の個体数密度が蛇行度と共に増加することが判明したこれらの魚種の個体数密度の増加には,蛇行度と共に増加する物理環境要因が係わることが明らかになった河道が大きく蛇行することによって形成される淵は,水深の深い環境や水深のばらつきの大きい環境を好む魚種に適した環境構造をもつと考えられる


山﨑 拓郎 YAMASAKI, Takuro
平成18年高知県立中村高校卒業。出身は高知県土佐清水市窪津。幡多の豊かな自然と温かな人情に囲まれて育つ。地元である幡多地域に貢献できるような研究をしたいと考え、活動拠点を黒潮実感センターに置き、卒業研究に打ち込む。

海洋レジャーへの転換とその持続性-高知県柏島を事例に―

山﨑拓郎(近畿大学農学部水産学科水産経済学研究室)

 近年日本の漁業は魚価低迷や漁獲量の減少から衰退し始めた。そこに海洋レジャーという新たな産業が成り立ち始めた。しかし、海洋レジャーが地産産業と成り得るには様々な問題がある。本研究では柏島のおかれている現状を把握し、どのように地域資源を利用するのか、地域経済に寄与するためにはどのような仕組みが有効かなどを、持続可能な海の利用を目指し考察した。ダイビングによる地域波及効果が少ない。儲かっているのは、ダイビングショップと、民宿・旅館程度である。島には特産品もない。数少ない飲食店も観光客には認知されていない。何か特産品を生み出し、さらには地域住民で経営する場をもうける。利益の共有である。所得格差が生まれることで、不平不満があるのが現状である。今後ダイビング以外の情報も外部に発信していくべきだろう。観光、漁業、ダイビングなどの産業同士がシナジーを発揮するような、社会的システムを構築する為に、パンフレットの作成を提案する。また、ワークショップを本研究の結論として行なったが、そのような合意形成の場が必要である。そのきっかけとしてイベントの開催を挙げた。また、持続可能という点に関して、ダイビングルールの制定見直しを提案する。


高木 基裕 TAKAGI, Motohiro, Ph.D 
DNAマーカーを利用して教育、研究、社会貢献などを実施。専門は水生生物の保全、放流魚および養殖魚の遺伝的管理。

四国におけるルリヨシノボリの遺伝的多様性

高木基裕(愛媛大学南予水産研究センター 准教授 博士(農学))

 ルリヨシノボリ(Rhinogobius sp. CO)は北海道から九州にかけて広く分布する両側回遊型のハゼ科ヨシノボリ属魚類であり、小河川や小さな支流の流れの速い早瀬やしぶきの立つ淵頭に生息する。ルリヨシノボリは、河川改修等の環境の変化による水量の激変や、河口域の環境汚染により個体数が減少し、複数の県において絶滅のおそれのある野生生物に指定されている。本研究では、高感度の遺伝マーカーであるマイクロサテライトDNA多型を用い、四国を中心としたルリヨシノボリ個体群の遺伝的多様度と分化の程度を評価し、ルリヨシノボリ個体群の保全管理に資することを目的とした。ルリヨシノボリは、愛媛県の大明神川・妙之谷川・薬師谷川、高知県の篠川・益野川・久百々川、徳島県喜来川および島根県浮布池の8個体群を用いた。個体サンプルは、エタノールで固定後DNAを抽出し、実験に供した。マイクロサテライト領域の増幅は、ヨシノボリ用プライマーのうち、多型性の高い3種(Rhi-5*、-7*、-11*)を用いて行った。DNA増幅断片の検出はRhi-5*、-7*においてはマニュアルシークエンスゲルにより、Rhi-11*においてはシーケンサーを用いてアリルサイズを決定した後、遺伝的多様性解析を行った。なお、多様性評価の対照として高知県久百々川のクロヨシノボリ(Rhinogobius sp. DA)の個体群を用いた。ルリヨシノボリ遺伝的多様性の指標であるアリル数の平均値は、それぞれ3.0から7.3、ヘテロ接合体率の平均値は、それぞれ0.418から0.503であり、ルリヨシノボリの遺伝的多様性はクロヨシノボリの10.30.743と比較して遺伝的多様性が低かった。特に、瀬戸内斜面の個体群のアリル数の平均は他の個体群と比べ、低い値を示した。また、ヘテロ接合体率の観察値と期待値の比は愛媛県の個体群の値が低かった。これらのことから、ルリヨシノボリは遺伝的多様性の減退が懸念され、特に瀬戸内側の個体群の保全が必要であることが示唆された。一方、アリル型をもとに個体群間の遺伝的異質性を算出したところ、多くの個体群間において有意差がみられたが、宇和海斜面の薬師谷川と篠川、薬師谷川と益野川、篠川と益野川および太平洋側の久百々川と喜来川間では有意差はみられなかった。


八木 和美 YAGI, Kazumi
ひょんな偶然から「砂浜美術館」を知り、初回に幡多の濃い人たちに出会う高知旅行を体験。以来、幡多ファン。全国の「内側から輝く地域」の人たちとの交流が、私の楽しみです。

地域の内発的な発展における環境NPOの役割

八木和美(法政大学大学院人間社会研究科 研究生)

 1970年代半ばごろに問題提起された、近代化論のパラダイムに対するオルタナティブな発展論の展開過程において、内発的発展論、地域主義など、各論が描く社会変革の担い手(主体)像に注目した。各論者は、広義の発展や振興のためには、ローカルな社会とリーダーをつなぐ中間組織、あるいはそのような組織やコミュニティが生み出される「場」が必要であると述べているが、それらは現在どのような姿を現しつつあるのかを、NPOの組織形成過程を通じて明らかにしようと試みた。事例研究では、幡多地域の4つのNPO(トンボと自然を考える会、四万十楽舎、砂浜美術館、黒潮実感センター)の組織形成過程を3つの時代に分けて分析。それぞれの組織において、「場」が育成されていることを明らかにした。しかし、明らかとなった「場」は、多様な姿を現しつつあるNPOの一面でしかなく、「変革の担い手」、あるいは、「地域社会と変革の担い手をつなぐ場」としてのNPOの姿までを明確に捉えきれていない。ちなみにここでいう「NPO」とは、広義の民間非営利組織であり、NPO法人だけを指すものではない。


四万十高校 Shimanto High School
四万十町大正において、四万十川の水質調査を毎月行っているほか、毎年テーマを決めて研究活動を行っている。県内外出身の濃い~メンバーが集う部活動。

四万十川流域のアミカ科幼虫

四万十高校自然環境部

 四万十高校は、高知県が実施している四万十川清流基準調査に平成14年度から参加しているが、この調査で清流の証とされているアミカ科幼虫を一度も採集できていない。そこで、四万十川にアミカ科幼虫が生息しているかどうか調査し、アミカ科幼虫が生息するのはどのような環境か考察した。調査は20103月〜9月に四万十川流域の6河川16地点で行った。調査地点の水生昆虫をすべて採集する定性調査とし、四万十川清流基準調査を参考に水温や気温、流速など13項目を同時に測定した。調査の結果、四万十川流域で48種のアミカ科幼虫を含む、少なくとも148種の水生昆虫を採集できた。アミカ科幼虫は、源流域に限らず本流の中流域にも生息していた。アミカ科幼虫は流れの速い滝のような場所に生息しており、リン酸イオン濃度やCOD、導電率との関係は見られなかった。また、アミカの種類によって出現傾向が異なった。ニホンアミカは他のアミカより比較的水温の高い場所に出現し、ヤマトアミカは春に羽化する一化性の昆虫であるため幼虫が見られる時期が冬や春の初めに限られた。


木村 宏 KIMURA, Hiroshi
東京に出て40年勤務の後、宿毛に戻って年金生活。北海道から沖縄まで野鳥を見て歩き現在確認種は413種。他には「だるま夕日」、トンボ、蝶など。

カワウ・ウミウ 幡多の鳥たち

木村宏(日本野鳥の会高知)

 宿毛湾には高知県に生息するカワウの7割が塒として集まっている。また、以前から足摺岬にウミウの塒があることが報告されていた。今回、カワウの塒として宿毛湾の一島、狩津海岸、ウミウは狩津海岸、足摺岬、古満目海岸において月一回一年間の塒入りカウントを行った。カワウの塒・一島では冬鳥としての最大羽数は2009/12月末の調査の1185羽、夏鳥として残った羽数は2010/5月の515羽、2010/7月末には892羽をカウントした。また、営巣数は200325個、200680個だったが2010年には109個をカウントし、確実に増えている。狩津海岸のカワウは最大2010/127羽だった。ウミウの塒として狩津海岸2009/1197羽、足摺岬2009/1197羽、古満目海岸2010/165羽の塒入りをカウントした。この他に宿毛湾にも塒があると予想された。2010/56月に四万十市、2010/9に宿毛市で開催した「幡多の野鳥・写真展」の野鳥写真を9枚紹介した。


川村 慎也 KAWAMURA, Shinya
発掘調査に魅せられて18年。現在は考古学だけでなく歴史、芸能、景観等様々な文化財から幡多のかたちを探求中。

考古学からみた幡多

川村慎也(四万十市教育委員会)

 遺跡から出土する土器や石器といった遺物は、遺跡が存在する地域について原始時代の生活様式や時代の移り変わりといった歴史の推移を知るための重要な資料となる。とくに出土量が多く、形態的な特徴を識別しやすい土器は、考古学において時代や生産地域等を知るための基本的な資料である。四万十市古津賀に所在する古津賀遺跡群からは、弥生時代中期に幡多地域で製作される在地産の甕(南四国型甕)と共に、九州東海岸沿岸部で製作される在地系土器及び須玖式土器の影響を受けた彩色土器、凹線文土器が出土する。彩色土器については四国内で類例の希少なものであり、幡多と九州東海岸沿岸部との結びつきを窺い知ることができる。また、縄文時代晩期から弥生時代への移行期における土器の変化に注目すると、弥生時代を迎えた後も縄文時代晩期突帯文土器の系譜を引く土器制作が続いていること等が知られ、弥生時代への移行が地域によって一様でないことを知ることができる。これらの事象は、当該地域が時代の変化に際して他地域と一律の変化を享受したものではなく、変化に対応して独自の選択を重ねてきたことを意味するものと考えられる。この自らの地域に主軸をおいた時代変化への適応という点において、発掘調査から知られる幡多の歴史は我々にとって示唆に富むものであろうと考える。


平野 三智 HIRANO, Michi
四万十楽舎のお客様に食事を提供させていただくことをキッカケに、只今地のもん料理修行中。周りには郷土料理づくりの達人おばちゃんがいっぱい。「あんたには無理」と言われ続けても、くじけることがないところが私の長所です。

四万十の美味いもんすごいもん

平野三智(四万十楽舎 事務局長)

 四万十のおばちゃんたちの料理に何度も何度も心打たれて虜になる。山の幸、川の幸、里の幸、すべてを大事に頂き、生活の中に生きている四万十の食の文化を受け継ぎ、つなげる時代に自分がいることを強く感じる。山菜の保存方法、生きたままのツガニをバキバキ手で割っていく豪快さ、田舎寿司(タケノコ寿司・ミョウガ寿司・ハスイモ寿司・こんにゃく寿司などなど)の作り方、出前味噌、手前漬け物、などなど、おばちゃんたちに教わりたいことは山ほどある。鮎を捕り、けものを捌くおんちゃんとのコンビプレイ。(さすがにけものを捌くのは男に任せたいけど)昔は、親から子へ、子から孫へと受け継がれてきたもの。自分たちの地域に、たくさんのおいしい素があること、その食材を活かした技と味があることをもっとよく知りたいし、知ってもらいたい。そこには幸せを感じられるものがあり、生きていく自信につながるものがあるから。若い世代や子ども達を対象に、地域のおばちゃんに先生になってもらう田舎料理づくり体験を続けているのもそんな思いからである。


神田 優 KANDA, Masaru, Ph.D
“島が丸ごと博物館”という構想の元、海のフィールドミュージアムを作ろうと98年に単身柏島に乗り込み、2002年NPO法人黒潮実感センターを立ち上げる。島の自然と人の暮らしが両立する、持続可能な「里海」づくりに挑戦している。

高知県柏島における藻場の変化

神田 優(NPO法人黒潮実感センター センター長 博士(農学))

 大月町柏島では10年以上前から磯焼け現象が深刻化してきている。藻場を形成するホンダワラ類は地元でモイカと呼ばれるアオリイカの産卵場としても利用されている。近年モイカの水揚げが落ち込む中で大勢やってきたダイバーによる影響と地元漁業者からの声が上がり、両者の対立が深刻化してきた。その緊張関係を緩和し両者が協力して間伐材を用いたモイカの人工産卵床を設置し資源を増やそうという活動を10年前から始め、全国有数の成果を上げることができた。その一方で2年前から本来の藻場再生にも取り組みはじめた。柏島での磯焼けが維持される要因としてウニ類による捕食圧の高さが上げられ、定期的に駆除したことで藻場が次第に再生しつつあることを、潜水調査と水面からの面積測定調査により明らかにした。


岩瀬 文人 IWASE, Fumihito

もとは和歌山県の水族館で飼育係兼研究員をしていた。10年前に大月に「サンゴ」をキーワードにする研究所を設立し、四国を拠点に活動している。行動範囲が広く、四国各地に出没する。近年海に入る回数が減り、太った。

黒潮生物研究所でやっていること

岩瀬文人(黒潮生物研究所 所長)

 黒潮生物研究所は2001年に大月町西泊に開設された臨海生物研究所である。この研究所で、岩瀬を中心としてどんな研究がなされてきたのかについて報告した。(1) 造礁サンゴの増殖:これまで飼育がとても難しいために誰も知らなかった「サンゴの生活史(一生)の詳細を知りたい」「サンゴが暮らすためにどんな環境が必要なのかを知りたい」という気持ちからはじめた研究所の基本研究のひとつ。毎夜海に潜ってどんなサンゴがいつ、どうやって卵を産むか調べ、産卵された卵を採集する道具を改良し、飼育方法を研究した結果、現在クシハダミドリイシとエンタクミドリイシという2種のサンゴについて、卵から育てたサンゴが卵を産むところまで観察することができた。それ以外にも、8種類のサンゴの種苗をつくることができるようになり、足摺海底館(海中展望塔)の造園などにもチャレンジしている。(2) オニヒトデの新しい駆除法の開発:ここ数年、四国ではオニヒトデが大発生しており、サンゴに大きな被害が出ている。これまで行われてきた駆除は、オニヒトデを捕獲して陸上で処理していたが、毒棘に刺される事故が多発し、危険だった。そこでもっと簡便で安全な駆除法を開発しようと考え、環境省から資金の援助を得て、岡山理科医大と共同研究を行った結果、動物用の連続注射器を使って、希酢酸を注射することによって環境にも人にも優しい駆除ができるようになった。(3) その他:各地の海の「自然再生」や「環境保全」の活動に参加したり、学校や地域の環境教育のお手伝いなどをしているが、岩瀬は本当は「八放サンゴ類」というマイナーな動物群の分類学が専門で、その研究をもっとやりたいと思っている。



浜口 和也 HAMAGUCHI, Kazuya

日本初の海域公園に指定された竜串の海を拠点に足摺宇和海国立公園内の水中ガイドや、地域振興団体主催のエコツアーなどを実施している。竜串におけるウミウシの多様性と、その生態・分布・出現時期について研究中。

竜串のウミウシたち

浜口和也(竜串ダイビングセンター 代表)

 竜串湾とその周辺の海域で2004年から2011年1月までに246種のウミウシの仲間(軟体動物門腹足綱後鰓亜綱)を確認・撮影。内湾域と外洋域で見られる種にある程度の特徴があることに着目。また、ウミウシの様子をとらえた動画を紹介し、写真だけでは伝わりにくいウミウシの魅力にせまる。未だ確認していないウミウシがたくさんいて、中でも探し求めている種を幾種紹介。



山下 慎吾 YAMASHITA, Shingo, Ph.D
古い民家を拠点にして研究、講師、フィールド実習などを実施。興味の対象は魚のすみかと波多のくらし。川に潜ったり山に登ったりGIS解析をしながらニヤリとしたり。たまに納屋飲み。

幡多の流域 瀬淵の名前 -氾濫原という視点から-

山下慎吾(魚と山の空間生態研究所 代表 博士(学術))

 生物の多様性に関する国際条約、環境基本法、自然再生事業などの動きをみていると、生物多様性を維持するには、生物をその生息空間とともに保全することが重要だと認識されつつあることがわかる。今回は、生物の生息空間(地形)への興味をもってもらうことを目的として、(1) 流域と氾濫原について、(2) 氾濫原と魚のはなし、(3) 幡多の川でみられる瀬淵の名前について紹介した。(1) 流域とは ある水系に対して降水が集まる範囲をいい、流域のなかには洪水時にのみ水に浸かる場所「氾濫原」がある。氾濫原は、生物多様性や生物生産の中枢ともいわれている空間である一方、最も絶滅が危惧されている生態系でもある。(2) 氾濫原においてどのような形状をした一時的水域(広い水たまり)が多種の稚魚を育成するのかについて調べたところ、台風出水直後(10月)には水深が深いこと、翌春(3月)には植物などによる遮蔽効果が高いことが重要であることがわかった。(3) 四万十川の川漁師さんたちはガネンド、オオヅエ、ヤシチマキなど独自の呼称で河川地形を詳細に把握している。これらの河川地形呼称をマップにて示しながら、そのいわれなどを紹介した。